今回紹介するのはAfreecaTV PUBG League 2022 Season2 Final Stage Match4 Erangel KDF vs Tianba の最終盤面でのファイトです。
APL 2022 Season2 Final Stage全体のデータはこちらの記事で確認できます。
本編
本編中では選手の敬称を省略しています。ご了承ください。
NH vs Tianba vs DNW vs KDF 24:23~
残り4チームになった場面からです。
TianbaとDNWは4人生存、NHはファイト直後で1人ダウン状態の4人生存、KDFのみ3人生存といった状況です。
各チームのエリアとTianbaのスプリット 24:23~
TinabaはNHとKDFが自分たちの方に来ないように、2:2 でスプリットしてエリアを確保しています。
DNWはこの集落をずっと抑えていて、周りのチームの動向を窺いながら集落防衛を行っている状態です。この直前にNHが戦闘していたため、NHの様子を見に集落から少し出て確認しています。
一方でKDFとNHは充分なエリアが確保できておらず、完全に一つにまとまってしまっています。このままでは何も出来ないので、DNWかTianbaの方に攻めて行き、エリアを取りたい所です。
- スプリット:(【英】split: 分かれる) チーム内で分かれて行動すること。
1人と3人なら 1:3 スプリット、2人ずつなら 2:2 スプリットと言う。
NHの全滅 24:29
その直後、DNWはそのままNHに一気に射撃を加え、NHを全滅させます。NHが取っていたエリアを確保しにTianbaがスプリットの幅を広げ、それにDNWも応対します。
TianbaとKDFの侵攻 26:10~
安地が集落に寄ったので後退しようとするDNWの背後から、スプリットを解除したTianbaが詰めてきます。Tianbaがスプリットを解除したことで、KDFがフリーになり、集落も危うくなり、DNWはKDFとTianbaに挟まれる形になってしまいます。
そのままDNWは全滅し、Tianba 4人 vs KDF 3人の状況になります。
- 安地:安全地帯の略語。”安置” 表記派も多い。MAP上の白いサークルの範囲のこと。
Tianbaの仕掛け
ここでTianbaはKDFの中で少し離れたポジションに位置しているHikariに狙いを定めます。Linshu22がHikari・EENDのアグロを引き、Cui71とTangの位置を隠します。
- アグロ:(【英】aggro:攻撃性、けんか) 攻撃対象という意で使用されます。LOLなどでよく使用されるため、韓国人はPUBGでも使用する。
例) アグロを引く⇒攻撃対象を受け持つ、タンクする、フォーカスを受け持つ
※カードゲームではまた別の意味で使用されますが、今回はLOLで使用される方の意です。
そして、LinShu22は顔を出さずダウンを取られないようにします。その間にCui71とTangが前に詰めてHikariを撃破します。これでKDFは人数差が2人に広がり、さらにエリアのほとんども取られてしまい非常に苦しい展開です。
<Hikari vs LinShu22&Cui71&Tang クリップ>
・https://vod.afreecatv.com/player/92602962
KDF_AkadとEENDの連携
ここで相手と人数差が付いたことで、Tianbaは左右から2人ずつに分かれて進行します。しかし、左側で77とLinShu22の連携が上手く行かず、Akadに1対1の状況を作られてLinShu22がダウンしてしまいます。
さらに右側では屋根の上から2人に対してEENDがしっかりとゾーニングを行って建物に近づけさせません。
- ゾーニング:(【英】zoning:区分けする) ゲームでは自分達のエリアに敵を入れないように妨害することを言います。
こちらもLOL用語です。
使う業界によって若干異なる意味を持つかもしれません。
EENDは位置の有利を活用してダウンしないように体力を削り合い、Akadがカバーに来る時間を稼ぎます。ここでEENDはTianbaのどちらもダウンさせることは出来ませんでしたが、この場面ではダウンを取ることよりも自身が生存することが重要だったのでEENDはしっかりと引きました。
すでに人数差が出来ている状況で1対1のトレードになってしまうと勝ち目がかなり薄くなってしまうので、ダウンが取れなくても屋根の上からプレッシャーを出し続ける事がこの後に繋がりました。
EENDが必死に時間を稼いだ甲斐あって、Akadのカバーが間に合いCui71をダウンさせることができます。この場面でTianbaは77が上手く仕事を出来ていないため、LinShu22の蘇生も出来ず、Akadの動向も見れていませんでした。そのため、実質的に2on2になってしまい、体力・ポジションともに厳しかったCui71とTangが辛くなってしまいました。
その後、AkadがTang・77ともに倒してKDFがドン勝獲得となりました。
<EENDの粘りとAkadのカバーそしてドン勝クリップ>
・https://vod.afreecatv.com/player/92608589
<フルクリップ>
・https://vod.afreecatv.com/player/92608626
<元動画>
本配信:https://vod.afreecatv.com/player/92258319
MAP:https://vod.afreecatv.com/player/92257895
まとめ
今回の戦いで鍵となったプレーは、お互いの選手がみせた1人がアグロを引いて味方にカバーしてもらうことで確実にダウンを取るプレーです。
Tianbaが自分たちの有利を拡大するためにHikari選手に対して3人で詰めたプレーは、非常に強力でKDFのエリアを狭めて一気に形勢がTianbaに傾きました。
その後、Tianbaは2:2に分かれてAkad選手、EEND選手に対してそれぞれ2人ずつで対応しました。しかし、77選手とLinShu22選手の位置がずれてAkad選手と1対1での撃ち合いになってしまったのが痛いミスでした。EEND選手の方面は高さと位置の有利がKDFに有り、人数有利とはいえTianba側が楽に詰められる場所では無かったので、EEND選手のダウンを取るのは難易度が少し高かったです。ただ、そこにEEND選手をくぎ付けに出来ていたので、Akad選手に対して2人で仕掛けて1:1のトレードが出来ればTianbaの勝ちでした。しかし、Akad選手と2対1の状況が作れず、LinShu22選手が逆にダウンさせられてしまいました。
また、Akad選手に1:1で敗れた後でもEEND選手のダウンが取れれば1:1のトレードは成立してました。しかし、ここでEEND選手は自分の命がどれだけ大切なのかと、Akad選手がカバーに来れることを分かっていて、ピークしすぎないようにして耐えきりました。このプレーで勝敗が決しました。
途中、完全にTianba有利の状況になりましたが、状況把握能力の高さと連携力の高さでKDFが打開しました。KDFのドン勝数の多さはムーブ面の上手さもありますが、終盤のファイトをしっかり勝ち切れる所にあると思います。PWS中に不調な時期はありましたが、完成度はかなり高い状態なので、PCS7、PGCでの活躍にも期待です。
私見
今回の記事に関連しているか若干怪しいですが、個人的な考えを書いておきます。大したことは書いてないですし、稚拙な文章なので覚悟して読んでください。
局所的に人数差をつける、カバーを貰ってリスクを減らすといったプレーはどの競技でも意識されていることだと思います。ただ、PUBGは非常にキルタイムが早く、ヒーラー的な存在もいないためタンクのように長時間アグロを引くことは難しいため、連携が緻密でなければ人数差があっても一瞬でモンタージュの材料にされてしまいます。
そしてPUBGは毎回のように戦場となるエリアが変わっていくので、固定的なコミュニケーションが取れません。その中で素早く細かい連携が必要になるので、他のシューティングタイトルよりもチーム内で詳細な意思の疎通が重要になります。現在日本チームの多くが韓国人選手をロースターに入れていますが、PUBGでチーム内に言語の壁があるのはかなりのハンデを背負っている状態です。
PUBGではムーブなどのマクロ面、aimやファイト時の立ち回りなどのミクロ面の両面が勝利に近づくために必要です。わかりやすく考えるならマクロは順位pt、ミクロはキルptを取るために必要と考えてもい良いかもしれません。少し大雑把な考えですが。
FPSにおけるミクロはThis is パワーで、ミクロがあればマクロを切り裂く事ができます。マクロの影響力も大きいですが、ミクロが一定以上あることが大前提です。ミクロが無いマクロは難易度が爆上がりします。PUBGで言うと、ムーブでどんなに有利な位置取りをしても撃ち合いで負けたらptは入りません。そして、安地の機嫌に影響を受けるムーブだけで得点を稼ぐのは賢い選択とは言えません。
PUBGは他のシューティングタイトルよりもMAPが広大なため、マクロ・ミクロの規模も他のゲームよりも大きくなります。
マクロは降下地点から安地へのムーブや、抑える集落の位置や人数配置の仕方など、文字通り規模の大きいことです。
対してミクロは射撃の精度、投擲物の精度、キャラコン、ピークの仕方などの技術・技量のことを言います。ただ、PUBGに於いてはミクロは先述のようにキルを取りに行くための技量と考えてもいい気がします。
そう考えると、個人技だけではなくチームファイト時の連携はミクロだと考えることもできます。PUBGにはダウン状態があって1on1に勝ったからといってすぐにキルが入るわけではありませんし、多対1に勝つのは非常に難しいです。そのため個人技だけでキルを稼ぐというのは不可能ではありませんが、あまり合理的ではありません。個人技が高いことに越したことはありませんが、どう考えてもその個人技を活かしてチームで連携を取った方が強いです。
個人のミクロの高さは必要ですが、1人だけで発揮できる攻撃力はたかが知れています。最終的に重要なのはチームとしてどれだけの火力をファイトで出力できるかなので、個人技に頼って連携を疎かにしているチームは連携があるチームに勝てません。だからこそ韓国チームはロースター変更が有った際はチームでひたすらランクマッチを回して意思のすり合わせをしています。
コミュニケーションに関しては、ゲーム外でも一緒に生活するプロチームとそうでないチームでは円滑な連携を構築するまでの速度が違います。オフラインでの練習環境が無いというのはそういった面で、非常に大きな差になります。
日本のチームと中国・韓国のチームの差は個人技というよりこの連携の部分が大きいです。これに関しては練習の量、質が直結してくる部分だと思うので、練習しないチームは上手くなりません。専業プロの少なさ、日本のe-sportsシーンの環境などに問題はありますが、強い日本チームが出てくると観戦ももっと楽しくなるので期待してます。
- マクロ:(【英】macro:大きい) 試合を大局的に見た時の戦略や判断のこと。
意味通り大きな意味でのチームの作戦、方針など。(LOLでよく使われる。)
PUBGではムーブやポジションの選択など。 - ミクロ:(【英】micro:小さい) マクロと対照的な意味で、細かい部分を指す
キャラの操作やaim、立ち回りなど
FPSではフィジカルと言われることが多いかも
終わり
今回の記事はここまで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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